先日10月22日、衆議院選挙の投開票が行われました。結果については様々な見方がありますが、国民の半数近くが投票に行かない、あるいは支持する政党が特にないという状況で、かつ死票が多い小選挙区制度を採用している中で、先日の選挙に限らず昨今の選挙の結果が、民意を完全に反映しているかと言うのは、なかなか難しいのではないでしょうか。
一方今回の選挙で「草の根からの民主主義」「下から押し上げる政治」という言葉が、選挙においての一つのキーワードとして使われたことが、一つの大きな特徴でした。
ご存知のように、これは、急遽誕生した立憲民主党が、選挙戦略として前面に押し出したメッセージで、立憲民主党が今後、この考え方を党政策として進めて行くのかは、まだ何とも言えません。
しかしなかなか選挙において民意を反映する結果を得れない現代において、私達、市民の側でも、ボトムアップの草の根で民意を政策に反映していくために、これから何が出来るのか改めて考えるべきでしょう。選挙応援といったお祭り期間ではない、普通の時の活動こそが、何と言っても重要なのですから。
実はアメリカでも、去年の大統領選挙後に、多くの市民たちが「これから新たな行動をせねば」と考え、数々の市民グループが立ち上りました。そして、その中で最も話題になったのが、「インディビジブル」というグループでした。
一つのツイートから始まった、立ち上がった地元グループは6000近くにも
「インディビジブル(英語ではIndivisible)」を始めたのは、30代の“元”連邦議会スタッフ達。トランプ大統領が移民・マイノリティー差別やその他の排外的政策を導入することを心配した彼らは、去年の12月に2週間ほどかけて、トランプ抵抗のための市民行動マニュアル(指南書)を作りました。それを「インディビジブル・ガイド」と名付けてツイッターにあげたところ大反響を呼び、数日間で数十万の人達にシェアされたのです。
この「インディビジブル・ガイド」のメッセージは、「トランプ政策を阻止するために、連邦議会の議員に圧力をかけよう。それには、抗議デモや署名集めだけじゃダメ。一番効果的なのは、議員の選挙区で市民グループを作って、“地元”で行動しよう!」。そして、その地元で行動するための具体的なノウハウを、マニュアル化して紹介したのです。
これに反応した市民達が、それぞれの地元で「インディビジブル」グループを立ち上げ、その数、既に全国で6000近く。これまで様々なトランプ政策抵抗行動をしているのですが、特にトランプ政権が選挙公約にしていた、「オバマケア(医療保険制度改革法)」廃止を阻止するために大活躍しています(おかげで、この記事を書いている時点で、オバマケアはまだ生き延びています)。
ちなみに、「インディビジブル」の日本語訳は「不可分、分かつことが出来ない」。つまり「トランプ政策によって、アメリカが分断されないように頑張ろう」という意味が込められています。
全米中に、これほど広がった理由は?
それにしても、なぜ、「インディビジブル」草の根グループ活動が、わずか数ヶ月でこれほど広がったのでしょうか?
まず、「インディジビブル・ガイド」の制作者達が、以前に米議会で仕事をしていた、という背景があります。連邦議員達の考え方や行動を内側からしっかりと見ていた彼ら、まさに内部関係者からのアイデアは、一般市民にとって非常に説得力があったのです。
さらに、「インディビジブル・ガイド」が、とても使いやすいことも重要でした。時間のない人は、最初の1ページのサマリーを読むだけでも要点をつかめます。そして、本文の方には、「グループの最初のミーティングで話すこと」とか、「議員の事務所にグループで訪問する場合」などの、それぞれの場面における行動に、ステップバイステップのアドバイスが、わかりやすくまとめられています。
そして、タイミング。大統領選後、「何かをしなければ!」と街頭デモや募金をする市民たちが急増していました。彼らは皆、来たるトランプ政権への抵抗ための新しいアイデアを求めていたわけで、そこへ、「インディビジブル」が絶妙のタイミングで登場したのです。結果、SSNや既存のメディアを通じて一気に拡散されたのです。
「インディビジブル・ガイド」日本語訳がGrassrootsで読める
そんなわけで、現在も全米の様々な場所で「インディビジブル」グループ達の活動が続いており、来年の中間選挙に向けてさらに活発化することが予想されます。
その「インディビジブル・ガイド」、ちょっと読んでみたくなりませんか?
実は、Grassroots は、インディビジブル本部と交渉し、「インディビジブル・ガイド」の日本語訳を作成しました。下記のリンクからご覧いただけます。賛助会員になって頂ければ日本語訳全文が読むことができます。
もちろん、日本の政治・社会状況はアメリカとはかなり違うので、この「インディビジブル・ガイド」をそのまま日本で使うのは難しいでしょう。でも、今後の日本における草の根政治行動を考えるにあたっての何かヒントになれば、と思っています。何か新しいことをしたいな、と思っている方、ぜひチェックして下さい!
・「インディビジブル・ガイド」原本(英語版全26ページ)[PDF]
・「インディビジブル・ガイド」日本語訳(要約のみ)[PDF]
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